今日のシーベルト(まとめ)

 東日本大震災からほぼ一月、福島第一原発の放射能漏れも4週間が経過した。
余震もあり原発の状況はまだ予断を許さないが、とりあえず緊急の冷却は継続しているようで、低レベル放射能水の放出などは行われているが、このまま冷却を継続できれば原子炉を安定した状態(冷温停止?)に持ち込めるのかもしれない。

 筆者はまったくの素人であるが、この一月間、(被災者の方には申し訳ないが)個人的興味もあり、いくつかの公開されているサイトで放射線量の推移を見守ってきた。
当初、それらのサイトにはただの測定結果の数値の表しか載っておらず、グラフにしてみたのを以前にもアップしたが、それらのグラフおよびネットで調べたことから自分なりに気がついたこともあるので、風評被害や過度の放射能恐怖症に対する対策、参考にもなればと思い、まとめとして再度載せてみることにした。

1.東京都の健康安全研究センターのデータ
 データソースの一番目は、自分の近隣ということで、東京都の健康安全研究センターが公開している「都内の環境放射線測定結果」(測定場所:東京都新宿区百人町)である。
ここは、現在ではグラフも載っているものの、(余計な不安を煽るのを恐れてか)グラフの縦軸の縮尺が大きすぎて傾向がつかみにくいので、3月以降の全体の推移と、特に雨が降った3月21日以降のデータに曲線を当てはめたものを作成してみた。

(1)都内(新宿区百人町)の環境放射線測定結果(3月以降の全体の推移)
3月以降の全体の推移


 このグラフを見て最初に気づくのは、3月15から16日にかけての左の4つのパルス状のピークである。
 これはちょうど、福島第一原発1号機、3号機の水素爆発(3/12,14)、4号機の火災発生(3/15)の直後であり、当時の風向きなどは確認していないが、おそらくこれらの爆発、火災により炉心ないし使用済み核燃料から出た揮発性ガス(キセノン133?)によるものであろう。
 キセノンは希ガスであり化学反応性はないので地表にはとどまらずガスのまま流れ去ったものと思われる。
(キセノン133の半減期は5.2日と短いが、これによる減衰と判断するにはピークは急峻に過ぎる)
 この4つのピークの左から2番目の最高のものは、一時間毎の最大値で0.809マイクロシーベルト/時(μSv/h)を示しているが、これは測定時間分解能(不明だが1時間よりは短いはず、10分程度か?)でのピーク値であって、1時間の間(2011-03-15?10:00~10:59)、この値が継続していたわけではないことには注意する必要があろう。
(この一時間の平均値は0.496μSv/hにすぎず、0.16μSv/hが、この一時間の最小値)
 ここら辺の話は、時間変動のある現象を測定する場合の常識であると思われるが、案外区別されずに、瞬間最大値のみが一人歩きするのはよくあることである。
 放射線被爆(シーベルト)というのは「積分量」であるから、その時間強度であるSv/hと区別することが重要(と総統もいっておられる!時速と距離のようなもの)

 また、この0.809μSv/hという値であっても、世界平均の年間平均被爆線量(2.4mSv)を時間当たりにすると、0.27μSv/h程度であるから、さほど多いわけでない。
(個人的な目安だが、誤解を恐れずに言えば、とりあえず気にした方が良い(そこから逃げることを考える)のは、妊婦以外なら、100マイクロシーベルト/時を超えた値が何日も続くあたりではないかと思っている、
100マイクロが100時間(約4日)続くと、10000マイクロ=10mSv、これでも一時被爆限界の100mSvの1/10だが、
今ならまあ原発のkm近傍くらいか、従って福島原発正門前でも通過するだけなら、No Problem !?
 東電作業員の方、本当にご苦労様です。)

(2)都内(新宿区百人町)の環境放射線測定結果(21日以降)
21日以降


 3/21から翌日にかけて、東京地方には雨が降ったが、この部分を拡大したのが2番目のこの上の図である。
 最初の(1)のグラフで見ると、この時期以降の環境放射線量には、15日のものに比べると立ち上がりが鈍く、ピークも低い(2011-03-22?20:00~20:59の最大値で0.1660μSv/h、一時間平均で 0.155μSv/h)が、ゆっくり減衰するピークが現れている。
これは、同サイトにあるこの時期の「降下物(塵や雨)の放射能調査結果にもはっきりと出ているが、雨により空気中に滞留していた放射性物質が降下して地表に集積した、いわゆるフォールアウトによるものであろう。
 前記の調査結果によれば、放射性物質の種類(核種)として、ヨウ素131 (半減期8.2日)セシウム137(同30.1年)が検出されており、前者が一桁近く多い。

 このヨウ素131 の減衰の様子が見られるかと思い、適当な指数関数で当てはめてみたのが、上の図の緑色の線の予測値である。
目の子の手作業で試行錯誤しての当てはめなので精度は低いと思うが、半減期にして5.3日ほどの値であり、ヨウ素131 の半減期8.2日よりは有意に小さい。
おそらくは環境中におけるヨウ素131の減少(あてずっぽうだが、雨風による流出や、地下への浸透による放射線遮蔽効果が考えられる)によって、実効的な半減期が短くなっているのだろう。
(なお、崩壊したヨウ素131はキセノン131になるが、こちらは半減期が11日ほどあるものの希ガスで化学反応性がないので、すぐに地表面からは失われるのではないかと思われる)

 同様なことは、半減期のオーダは違うがセシウムにもいえるようで、アルカリ金属であるセシウムはカリウムやナトリウムと同様、生物学的な代謝により割と短期間で排出されるので、例えば体内被曝におけるセシウムの実効的な半減期は、200~300日の程度らしい(要出典)
 ヨウ素131が問題なのは、ヨウ素が特に成長期の子供の甲状腺に集まり滞留するからで、同様な問題はカルシウムと同様のアルカリ土類金属である、ストロンチウム90にもあるらしい(骨に滞留する)。

 もうひとつこの曲線を見て気がつくのは、減衰した指数関数の落ち着く先の値である。
(1)の全体のグラフの左端の値を見ると判るが、福島原発事故前の東京新宿での環境放射線のバックグランド値は、0.03~0.04μSv/hであったのに対し、21日以降のゆるいピークが落ち着く先の値は、先ほどの緑の曲線の当てはめ予測値によれば、0.07~0.08μSv/h位の値であり、ほぼ事故前の倍のバックグランド値である。
 しかもこの値は、キセノン133による15日の最初の鋭いピーク群が落ち着きそうになった値(約0.045μSv/h)よりも明らかに高いから、おそらく雨でヨウ素131とともに降ってきた半減期の長いセシウム137によるものであろう。
 先ほども述べたように、セシウム137の半減期は30.1年と長く、(東京都のデータには検出されてないが)仮に半減期が2年と短いセシウム134が足を引っ張るとしても、かなりの長期戦になることを覚悟しなければならないだろう。
 ただ、先ほども述べたように、環境中における放射性物質の実効的な半減期は、その化学反応性や、生体との親和性にもよるので、割と早期に減衰するかもしれない。
(比較はしたくないが、チェルノブイリの石棺の周りは、人がいない分もあって結構生態学的には楽園状態らしい。)

 それ以外に期待(?)される核種には、先ほどのストロンチウム90などの、軽質量数の核分裂生成物もあるが、これらがどんな見込みなのかは、素人なので予測はつかない。
 ご本尊であるウランやプルトニウムなどのアクチノイド系の核燃料物質が原子炉建屋近傍で検出されたという話もあったが、痕跡量程度で(ありがたいことに)見込み薄のようである。

 まとめると、ヨウ素の時代はそろそろ過ぎつつあり、これからはセシウムの時代になるのではなかろうか?
 事態は一部地域を除き基本的には今年一年で収束すると希望的観測も含め予想するが、今年の梅雨や、秋の台風が待ち遠しい気もする。

(参考)


電力館(東京・渋谷)における空気中の放射線量の状況
 (現在の値はこちら、いまだにグラフもないが...)

 
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つくば(KEK)の測定値(現在の値はこちら
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